アテルが過去に何らかの形で言及したバイオ・医薬株の例
以下、アテル投資顧問が過去にレポートなど何らかの形で言及した「医薬・バイオ関連企業」の事例を取り上げる。これらの分析や解説を俯瞰することで、アテルが有能なのかあるいはそうでもないのか、判断する一助となれば幸いだ。
住友ファーマ | ファーマフーズ | リボミック | メドレー | エムスリー |
■ 住友ファーマ
| ロゴ |
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|---|---|
| 銘柄コード | 4506 |
| 市場 | 東証プライム
(1945年5月上場) |
| 本社 | 大阪市 |
| 設立 | 2005年 |
| 筆頭株主 | 住友化学 |
| 業種 | 医薬品の製造、販売、研究開発 |
会社の歴史と評判
住友ファーマの前身である「大日本製薬(本社・大阪市)」は、長井長義・技術顧問が創製したエフェドリン(1927年発売)に始まり、戦後の大型製品になった抗菌剤パナシッドなど、新薬の開発・研究に力を入れた。
炎上事件簿
大日本製薬は1995年、不適切なポスターを配布し、炎上する事件を起こした。
低血圧と「登校拒否」「出社拒否」を結びつける広告
問題となったのは、低血圧を治療する薬の宣伝ポスターだった。「落ちこぼれ」「怠け者」という説明のついたイラストとともに「適切な低血圧の治療を受けないでいると『登校拒否』『出社拒否』にもなりかねません」などと書かれていた。
全国の開業医に配布
1万5000部を印刷し、全国の開業医に6500部を配布した。これを見た「山口県不登校を考える親の会ネットワーク」が抗議した。「不登校への差別や偏見を助長させる」「不登校の原因が低血圧であるとの誤解を招く」といった理由だった。
謝罪広告
大日本製薬は過ちを認め、新聞に謝罪広告を出すことを決めた。
歴代社長の評価
宮武健次郎氏(1999年6月~2008年6月)の経歴
宮武健次郎(みやたけ・けんじろう)氏は1938年2月16日生まれ。大阪に生まれ育った生粋の浪速っ子。
小学一年のときに疎開した。栗林公園(香川県高松市)の近くで暮らしていた1945年7月4日未明に空襲を受け、街は八割が焦土と化し、死者は1359人にのぼった。姉に手を引かれて命からがら逃げ出すことができたという。 関西学院大学(商学部)卒業。1961年、大日本製薬に入社。当時、父親の徳次郎氏が社長を務めていた。
取締役、常務、専務を経て1999年6月から社長。
伝説・武勇伝
福岡支店長時代、得意先の十数人を相手に焼酎のストレートを回し飲みする接待を、「九州男児に負けられない」とやり遂げた。
趣味
趣味は「飲酒歓談」。人との出会いを大切にし、「談論風発」の中で頭の整理ができるという。休日は山歩きやゴルフ、美術鑑賞などで過ごす。ざっくばらんな人柄だ。
評価「2005年の合併の立役者」
アテル投資顧問の評価によると、宮武氏は、2005年の大型合併による住友ファーマ誕生の立役者として高い評価を得ている。住友ファーマは2005年10月、大日本製薬(東証1部上場)と住友製薬(非上場)が合併して誕生した。当時、大日本製薬の社長は宮武氏だった。合併後の初代社長にも、宮武氏が就任した。なお、合併では、上場を維持するため大日本製薬を存続会社とした。
■ ファーマフーズ
ファーマフーズは、食品や化粧品に混ぜる「機能性食材」のメーカー。血圧降下作用を持ち、抗ストレス作用で知られる「GABA(ギャバ)」の大手。この素材が添加された菓子や飲料などのほぼすべてに同社製品が使用されている。とくに江崎グリコのチョコレートの添加物として有名。本社は京都市。
| ロゴ |
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|---|---|
| 銘柄コード | 2929 |
| 市場 | 東証プライム
(2006年6月「東証2部」上場) |
| 本社 | 京都市 |
| 設立 | 1997年 |
| 創業者 | 金武祚(きむ・むじょう) |
| 筆頭株主 | 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) |
| 業種 | 機能性食材メーカー |
ストレスを減らす「ギャバ(GABA)」の最大手
主力製品であるギャバはアミノ酸の一種。動物の脳や脊髄(せきずい)にある神経伝達物質である。人間が摂取すると血圧が下がったり、神経の興奮状態を抑えたりする効果が研究で示されている。同社の「ファーマギャバ」は2001年に独自手法の大量生産に成功した。
漬物に含まれる乳酸菌
ファーマフーズは、漬物の中に含まれる特殊な乳酸菌により高純度発酵する独自の仕組みを開発。大量生産が可能となった。また、ギャバ濃度20%と高品質で安価な製品を提供できるようになった。ストレス市場を狙う食品メーカーの戦略にも合致し、同社を支える柱に成長した。
創業者の金武祚(きむ・むじょう)氏は農学博士
同社は従業員の多くを研究者が占める研究開発型企業である。1997年設立。創業者の金武祚(きむ・むじょう)氏は朝鮮大学校を経て、京都大学の大学院で農学博士を取得した。学生だった1980年代前半に渡米し、天然物生理化学という分野に出合った。天然物生理化学は動植物の生存を支える物質を突き止め、その機能を調べる学問である。
太陽化学で常務
1988年、三重県の食品メーカー「太陽化学」入社、研究所長、常務を歴任。1997年ファーマフーズ研究所(現ファーマフーズ)を設立した。米国でも目新しかった機能性食材に特化した研究開発型ベンチャーである。1999年から社長。東大阪市出身。
素材メーカーから通販会社へ
もともとは、食品メーカーなどに機能性素材を供給するBtoB企業だった。しかし、2012年に通信販売事業へ参入して以降、事業構造は大きく変わった。自社で開発した素材を、他社の商品に入れてもらうだけでなく、自社ブランドの商品として直接消費者に売るようになったのである。
タマゴサミンも主力商品
通信販売事業では、関節の悩みに対応するサプリメント「タマゴサミン」も知られる。こちらは卵由来の成分を活用した商品で、ファーマフーズらしい「卵の研究」を前面に出した製品である。ギャバ、HGP、卵白ペプチドなど、同社の商品には、卵や食品素材を研究してきた企業としての色合いが強く残っている。
育毛剤「ニューモ」が大ヒット
近年は、薬用育毛剤「ニューモ」が大ヒット。2020年に定期顧客件数が20万件を突破した。ニューモは日米で特許を取得した卵由来の成分「HGP」を配合している。
明治薬品を子会社化
2021年には、医薬品や健康食品を扱う明治薬品を子会社化した。これにより、機能性素材、健康食品、医薬品、医薬部外品を組み合わせた事業展開がしやすくなった。近年の通信販売では、育毛剤ニューモだけでなく、整腸、耳鳴り、夜間尿など、より具体的な悩みに対応する医薬品・医薬部外品の販売も伸ばしている。
売上の中心はBtoC事業
現在のファーマフーズは、単なる素材メーカーとは言い切れない。2026年7月期第3四半期累計では、連結売上高485億5500万円のうち、BtoC事業が427億3400万円を占めた。BtoB事業の売上高は55億6000万円であり、売上規模で見れば、消費者向け通販会社としての性格が強くなっている。
広告宣伝費が重いビジネス
一方で、通販事業は広告宣伝費がかさみやすい。ニューモのようなヒット商品を生むには、テレビCM、新聞広告、ネット広告などで大量の顧客を獲得する必要がある。売上は大きく伸びるが、広告費をかけ続けなければ新規顧客を取りにくい。この点は、ファーマフーズの強みであると同時に、収益面での課題でもある。
GABAは大手メーカーに採用
従来からのBtoB事業も重要である。ファーマギャバは、江崎グリコのメンタルバランスチョコレート「GABA」など、大手食品メーカーの商品に採用されてきた。ロート製薬の成長期応援飲料「セノビック」や、日本コカ・コーラの「綾鷹 濃いほうじ茶」などにも、同社の機能性素材が関わっている。素材メーカーとしての信用力は、現在も同社の土台である。
創薬事業にも進出
さらに、バイオメディカル事業にも取り組んでいる。ニワトリ由来抗体作製技術「ALAgene」を使った抗体医薬の研究や、卵黄由来ペプチドの創薬研究を進めている。現時点では売上規模は小さいが、将来的にはライセンス収入や医薬品事業への展開を狙う分野である。
研究開発型企業としての個性
ファーマフーズの特徴は、食品、健康食品、化粧品、医薬部外品、医薬品をまたぐ点にある。出発点は機能性食材の研究開発だが、そこから通販、育毛剤、医薬品、創薬へと事業領域を広げてきた。卵、乳酸菌、アミノ酸、ペプチドといった身近な素材から、消費者向けの商品や医薬品候補を生み出そうとする会社である。
課題はヒット商品の次
最大の課題は、ニューモに続く柱を育てられるかどうかである。ニューモの成功で売上は大きく伸びたが、単一ブランドへの依存が強すぎると、広告効率の悪化や顧客離れが業績に響きやすい。会社側も、整腸、耳鳴り、尿ケア、まつ毛美容液、シャンプーなど、複数の商品を育てることで、収益源の分散を進めている。
機能性素材の会社から「バイオ通販企業」へ
ファーマフーズは、機能性素材の会社として始まり、ニューモの大ヒットで一気に消費者向け通販企業へ変貌した。今後は、BtoBの素材事業、BtoCの通販事業、明治薬品を軸にした医薬品・医薬部外品、さらに創薬事業をどう組み合わせるかが問われる。単なる健康食品会社ではなく、バイオ技術を武器にした通販・ヘルスケア企業として成長できるかが焦点となる。
■ リボミック(アテルの分析・評価・解説)
創薬バイオベンチャー。リボ核酸(RNA)を成分とする医薬品の開発を手掛ける。
| ロゴ |
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|---|---|
| 銘柄コード | 4591 |
| 市場 | 東証グロース
(2014年9月「マザーズ」上場) |
| 本社 | 東京・白金台 |
| 設立 | 2003年 |
| 創業者 | 中村義一(社長) |
| 筆頭株主 | SBI証券 |
| 業種 | 医薬品の開発 |
中村義一・東京大学医科学研究所教授
2003年設立。東京大学医科学研究所教授だった中村義一氏が発足した。中村氏は、遺伝子研究のフロンティアとなったボ核酸(RNA)に対し、東大で長く着目してきた。その研究成果を実社会で活用するため、中村氏が立ち上げ、自ら社長に就任した。
アプタマー医薬とは
「アプタマー」と呼ばれる医薬の研究が主力事業である。アプタマー医薬とは、病気の原因となるたんぱく質(標的)に取り付き、その働きを阻害することで治療に役立てる薬のこと。「アプタマー」という語は、「標的にフィットする」という意味のラテン語。
塩基配列のRNAを見つけ出して創薬へ
リボミックは、豊かな立体造形力を持つリボ核酸(RNA)をアプタマーに採用。特に標的に取り付きやすい塩基配列のRNAを見つけ出して創薬に結びつけるのが得意だという。
また、アプタマー創薬に関する総合的な技術や知識、経験、ノウハウを詰め込んだ情報システムを開発した。「RiboART(リボアート)システム」と呼ばれるこのシステムシステムを使い、疾患や標的タンパク質に限定されない様々な新薬の開発に取り組む。
大塚製薬が大株主
2008年に大塚製薬との間で長期共同研究契約。2014年に大正製薬との間で共同研究契約を結んだ。大塚製薬は、現在もリボミックの大株主である。
2014年にマザーズ上場
2014年9月、東証マザーズに上場した。日本発のRNA創薬技術を持つ大学発ベンチャーとして、上場時から一定の注目を集めた。もっとも、創薬ベンチャーにとって上場はゴールではない。研究成果を臨床試験、製薬会社への導出、承認取得、販売収入へと結び付けて初めて、事業として成立する。
主力候補「RBM-007」
開発パイプラインの中心にあるのが「RBM-007」である。FGF2(線維芽細胞増殖因子2)を標的とするアプタマーで、軟骨無形成症、滲出型加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫などへの応用が進められている。
軟骨無形成症で第3相へ
特に期待が高いのが、軟骨無形成症向けの開発である。軟骨無形成症は、手足の骨の成長が阻害され、低身長などを引き起こす希少疾患である。リボミックは、FGF2を阻害することで、骨の成長を妨げるシグナルを抑える薬を目指している。
この「RBM-007」は、厚生労働省から希少疾病用医薬品の指定を受けた。2026年の決算説明では、第2相臨床試験を終えて薬効を確認し、PoC(概念実証)を得たとして、第3相臨床試験に進む段階にあることが説明された。
眼科領域でも開発
もう一つの重点分野が眼科領域である。滲出型加齢黄斑変性は、網膜の中心部に障害が生じ、視力低下や失明につながる病気である。既存薬として抗VEGF薬が使われているが、すべての患者に十分な効果があるわけではない。リボミックは、血管新生や線維化に関わるFGF2を阻害することで、新しい治療選択肢をつくろうとしている。
導出モデルが基本
リボミックは、大手製薬会社のように自前の販売網を持つ会社ではない。基本は、RiboARTシステムを使って新薬候補を創製し、臨床試験で価値を高めたうえで、製薬会社へライセンスアウトするモデルである。開発が進めば、契約一時金、開発段階に応じたマイルストーン収入、将来のロイヤルティが期待できる。
一方で、導出契約がまとまらなければ、研究開発費だけが先行する。ここが創薬バイオベンチャーの厳しいところである。優れた技術を持っていても、それが医薬品として承認され、さらに商業的に売れるところまで到達しなければ、大きな収益にはならない。
売上はまだ小さく、赤字が続く
2026年3月期の事業収益は3百万円にとどまった。営業損失は12億700万円、当期純損失は11億4500万円だった。医薬品の承認・販売に至っていないため、通常の製造業やサービス業のような売上規模はまだない。
この数字だけを見ると、事業基盤は極めて小さい。しかし、創薬バイオベンチャーは、短期の売上高だけで評価する会社ではない。一本の有力な開発品が臨床試験で成功し、大手製薬会社への導出や承認取得につながれば、企業価値が一変する可能性がある。その反面、臨床試験の失敗や遅延が起きれば、資金調達の負担や株式の希薄化リスクが重くなる。
DDSアプタマーという新しい柱
近年は、アプタマーを薬物送達システム(DDS)に使う取り組みにも力を入れている。これは、薬剤を目的の組織へ届けるためにアプタマーを活用する技術である。リボミックは、従来の創薬事業に加えて、DDSアプタマーを使った創薬支援事業を新しい収益源に育てようとしている。
この分野で製薬会社との契約が増えれば、医薬品そのものの承認を待たずに、技術提供による収益を得る道が開ける。赤字が続く創薬ベンチャーにとって、こうした周辺事業の収益化は重要な意味を持つ。
研究室から市場へ進めるか
リボミックの本質は、東京大学発の基盤技術を、実際の医薬品ビジネスに転換できるかどうかにある。RNAアプタマーという独自性は明確であり、RBM-007を中心に有望な開発テーマもある。問題は、それを臨床試験の成功、製薬会社との大型提携、承認取得という形に結び付けられるかである。
研究開発型のバイオベンチャーである以上、リスクは大きい。しかし、成功すれば見返りも大きい。リボミックは、まさに「研究室の技術」を「市場の薬」に変えられるかどうかを問われている会社である。
■ メドレー(アテルの分析・評価・解説)
医療・介護専門の求人サイト「ジョブメドレー」運営する。 同サイトは、医師、看護師、薬剤師が求職や転職に使う。 このほか、医療事務、保育士、歯科助手・歯科衛生士、介護職・ヘルパー向けの求人もカバーしており、職種が幅広いのが特徴になっている。
求人側の施設・企業から成果報酬
収益源は、採用が決まったときに求職側の施設や企業(事業主)から受け取る成果報酬である。
| 業種 | 医療・介護専門の求人サイト運営 |
|---|---|
| 推奨時点の株価 (推奨日の始値) |
1,737円
(2020年2月25日) |
| 現在の株価 | こちら→ |
| 市場 | 東証プライム
(2019年12月マザーズ上場) |
| ロゴ |
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創業者・豊田剛一郎氏は医者から転身
創業者の豊田剛一郎氏は、もともと医師だった。東京大学医学部を卒業。脳神経外科の研修医として病院勤務の後、専門性を高めるため米国に留学した。帰国後に外資系コンサル会社に勤務した後、自ら起業した。
医療・介護現場の人手不足を背景に成長
メドレーの成長を支えているのは、医療・介護分野の慢性的な人手不足である。病院、診療所、歯科医院、薬局、介護施設、保育施設などは、常に人材確保に悩まされている。しかも、医療・介護の仕事は資格や経験が重視されるため、一般的な求人サイトだけでは十分に人材を集めにくい。
そこで、医療・介護・福祉に特化したジョブメドレーのような求人サイトに需要が生まれる。求職者にとっては、自分の資格や職種に合った求人を探しやすい。事業所にとっては、医療・介護分野で働く意思のある人に直接アプローチしやすい。人手不足が続く限り、この仕組みには一定の需要が残る。
掲載課金でなく、採用決定時に収益化する仕組み
ジョブメドレーの特徴は、単に求人広告を掲載して終わりではない点にある。採用が決まった段階で成果報酬が発生するため、求人を出す施設側から見れば、無駄な広告費を抑えやすい。特に中小規模のクリニックや介護事業所にとって、初期費用を抑えて採用活動を始められる点は大きい。
一方で、メドレー側から見ると、求人数、登録者数、応募数、採用決定数を積み上げることで収益を伸ばしやすい。医療・介護という専門分野に絞り込んでいるため、一般的な求人媒体よりも利用者の目的が明確で、マッチングの精度を高めやすい。
医療DXにも事業領域を広げる
メドレーは、求人サイトだけの会社ではない。医療機関向けのクラウド診療支援システム「CLINICS」なども展開している。オンライン診療、予約、問診、電子カルテ、決済など、医療機関の業務をデジタル化するサービス群を広げている。
この方向性は、単なる求人ビジネスから、医療・介護現場の業務インフラを担う会社へと広がっていく動きだと言える。人材採用を支援する「ジョブメドレー」と、医療機関の業務効率化を支援する「CLINICS」などを持つことで、医療現場の複数の課題に入り込む形になっている。
強みは専門領域への集中
メドレーの強みは、医療・介護・ヘルスケアという専門領域に集中していることだ。医療や介護は、一般企業の採用とは違い、資格、勤務形態、夜勤、地域性、施設種別など、求人条件が細かい。だからこそ、専門特化型の求人サイトに価値が生まれる。
また、医療・介護分野は景気変動の影響を受けにくい。景気が悪くなっても、病気や介護の需要が急になくなるわけではない。むしろ高齢化の進展によって、医療・介護サービスへの需要は長期的に増えやすい。そのため、同社の事業は社会構造の変化を追い風にしやすい。
課題は競争と採用単価の維持
ただし、求人ビジネスである以上、競争は激しい。医療・介護分野には、人材紹介会社、求人広告会社、派遣会社、地域密着型の採用支援会社などが多数存在する。ジョブメドレーが成長を続けるには、求職者と事業所の双方を集め続けなければならない。
また、成果報酬型のモデルは、採用が決まらなければ収益にならない。登録者が増えても、実際の採用決定につながらなければ売上には結びつかない。求人件数を増やすだけでなく、応募から採用までの歩留まりを高めることが重要になる。
医療・介護の人材インフラ企業へ
メドレーは、医療・介護という人手不足が深刻な分野で、求人、採用、業務効率化を支援している会社である。創業事業であるジョブメドレーは、医療・介護人材と事業所をつなぐインフラとしての性格を強めている。
今後の成長は、ジョブメドレーの利用拡大に加え、医療DX関連サービスをどこまで広げられるかにかかっている。単なる求人サイト運営会社にとどまらず、医療・介護現場の人材不足と業務負担を同時に解決する企業へ進化できるかが、メドレーを見るうえでの重要なポイントになる。
■ エムスリー(アテルの分析・評価・解説)
医師向けの医薬品情報サイト「エムスリードットコム」を運営する。 同サイトでは、新しい薬の情報が閲覧できる。 製薬会社のMR(医薬情報担当者)と医師との情報交換をインターネット上でサポートする場となる。
| 業種 | 医師向けサイトの運営 |
|---|---|
| 推奨時点の株価 (推奨日の始値) |
3,150円
(2020年2月4日) |
| 現在の株価 | こちら→ |
| 市場 | 東証1部
(2004年9月上場) |
| ロゴ |
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製薬業界からの利用料が収益源
医師は情報の入手が容易になり、MRは効率的なプロモーション活動ができるという点がこのシステムの最大の特徴。医師の利用は無料で、製薬業界からの利用料がエムスリーの主な収益源となる。
コロナ自粛で利用者が急増
2020年、新型コロナウイルスの影響で製薬会社による営業活動が抑制された。MRは通常、医薬品の適正使用のために医師を訪問し、有効性や安全性に関する情報提供を担うが、コロナで訪問を自粛せざるを得なくなった。この結果、サイトのの利用者数が急増した。
ソニーグループ
ソニーのインターネット接続事業会社「ソネット(ソニーコミュニケーションネットワーク)」が母体となって、2000年9月に設立された。当初はソネットの100%出資で、社名は「ソネット・エムスリー」だった。 現在もソニーグループが大株主となっている。
マッキンゼーの谷村格氏が、ソニーに移籍して創業
設立の中心メンバーとなったのは、谷村格氏。大学卒業後、マッキンゼー日本支社に入社。ヘルスケア関連産業を担当し、1999年にはパートナー(共同経営者)に就任した。もともとソネットは谷村氏のクライアントだった。ソネットの医療分野の新規事業を一緒に検討するなかで、初代CEOとして招かれた。
医師会員ネットワークが最大の資産
エムスリーの最大の強みは、単なる医療情報サイトではなく、医師会員の巨大なネットワークを持っている点にある。製薬会社にとっては、医師に直接情報を届けられる媒体であり、医師にとっては、日々の診療や薬剤選択に必要な情報を効率よく得られる入り口になる。この両面性が、エムスリーの競争力を支えてきた。
「MR君」が事業の原型
創業初期からの主力サービスが「MR君」である。これは、製薬会社のMRが医師に対して、インターネット上で医薬品情報を提供する仕組みである。従来、製薬会社の営業活動は、MRが病院や診療所を訪問する形が中心だった。しかし、医師は多忙であり、面会時間を確保するのは容易ではない。エムスリーは、この非効率な部分をネットで置き換えた。
製薬会社にとっては、限られたMRの人数で、より多くの医師に情報を届けることができる。医師にとっても、必要なときに必要な情報を確認できる。このため、単なる広告媒体ではなく、医療現場と製薬会社をつなぐインフラとして定着していった。
2004年に東証マザーズ上場
ソネット・エムスリーは、2004年9月に東証マザーズに上場した。その後、2007年3月には東証1部へ市場変更した。2010年1月には、社名を「エムスリー株式会社」に変更した。
社名の「M3」は、「Medicine」「Media」「Metamorphosis」の頭文字に由来する。医療とメディアを組み合わせ、医療の世界を変革するという意味が込められている。
医師向けから、医療全体へ事業を拡大
エムスリーは、医師向けの情報提供サービスから出発したが、その後は事業領域を広げていった。医師・薬剤師向けの人材紹介、治験支援、電子カルテ、医療機関の経営支援、一般向けの医療相談サービスなど、医療に関わる周辺分野へ次々と展開している。
医師会員という強力な基盤を持っているため、新しい医療関連サービスを始める際にも、既存のネットワークを活用できる。これがエムスリーの成長を加速させた。医療業界では、医師との接点を持つこと自体が大きな価値を持つ。エムスリーは、その接点をインターネット上で大規模に確保した会社だと言える。
海外展開も進める
国内で築いた医師向けプラットフォームの仕組みは、海外にも広げられた。米国、欧州、アジアなどで医師向けサービスや医療関連事業を展開している。国ごとに医療制度や製薬業界の商習慣は異なるが、医師に専門情報を届けたいという製薬会社のニーズは共通している。
そのため、エムスリーの事業モデルは、日本国内だけに閉じたものではない。医療情報、製薬会社のマーケティング、医師ネットワークを組み合わせることで、海外でも横展開しやすい構造を持っている。
コロナ後の反動と成長鈍化
一方で、コロナ禍で急拡大した需要には反動もあった。製薬会社の訪問営業が再開されると、オンラインだけに依存する状況はやや薄れた。また、医療DX関連の事業は成長余地が大きい反面、競争も激しい。電子カルテ、オンライン診療、医療機関支援などの分野では、専門会社やスタートアップも参入している。
エムスリーは、医師向けプラットフォームという強固な基盤を持つが、今後はそれをどのように新しい収益源へ結びつけるかが問われる。製薬会社向けのマーケティング支援だけでなく、治験、医療機関経営、患者向けサービス、データ活用などへ広げられるかが、次の成長の焦点となる。
医療業界のネット化を先取りした企業
エムスリーの歴史は、医療業界の情報流通が紙と対面からインターネットへ移っていく過程そのものでもある。医師と製薬会社の接点をネット上に移し、そこに巨大な会員基盤を築いたことが、同社の成功の出発点だった。
医療は規制が多く、変化が遅い業界である。しかし、だからこそ、一度ネットワークを築いた企業には大きな優位性が生まれる。エムスリーは、医療分野におけるインターネット企業の代表例であり、医療DXの先駆けとも言える存在である。